いつも冗談ばかりで 苦労話や自慢話さえしなかった、おやじ。
つい先日 施設のベッドで言ったな。
幼かったころ 父親を早くに亡くし
「もう少し長生きしてくれたら 学校にいけたはずだった」
長年 心の引き出しにしまっていた思い。
くやしかったろう
震えるよう瞬く光 遠い花火のように
私たちの心に焼き付いた。
学歴がない事など関係ないと言わんばかりに
おやじは頑張ったな。
地域に貢献し多くの人と仕事の枠をこえた絆を
作り上げたからこその証だろう
昨年秋から夫婦で同じ施設に入所して
痴呆を患った母は父の部屋へ毎日
顔をだすのが日課だった
「家に帰りたい」なげく母を見て
「連れて帰ってやれ!」初めてだったね。
おやじが怒鳴った!
時代の苦労と共に心はつながって
僕らは知っている。
報われないこともある。
それでもおやじの人生は
まっすぐに今日まで歩いてきた事を。